気持ちのよろしい『リコリス・ピザ』

最近は仕事も落ち着いている日が多く、仕事とはなんぞやと思う。休みと平日の境目をなくしていくことでダイエットを継続することが可能だ。

やっぱりこの日も暇で、昨日は新宿で『わたしは最悪。』という、何もないスレッカラシの映画を観た、この映画は一体なんなのか、瀬戸内寂聴物語、失楽園ブームの再来なのか、スレッカラシであった、好き放題ふるまうのも好き好きだか、節操ねえバカはどうしようもない。

なので今日は日比谷だ、とシネシャンテに朝から向かう。日比谷はいいね、地下鉄からシャンテに直結、しかし、わかってはいるものの、シャンテにシネシャンテはないのだ。しかし、もしかして?という気持ちからシャンテから出る、晴れている、ビルの間に雲と太陽。晴れてる。

シネシャンテの平日朝の会は年齢層が高い、居心地がいい、PTAの映画はコメディだ、際物たちの人間性、破綻した人間性の、主に悲しみを描くコメディだから、おじいさんと一緒に、ツボが一緒のおじいさんと一緒に笑った、同じ個所で。

ハイムである。この人達のバンドはめちゃくちゃ有名らしいが、なぜなのか。いつも不思議だ。立ち振る舞いだろうか。クラフトジンを作る三姉妹もいる、クローバージンは要チェックである。クラフトジンのHAIMである。

ハイムの三女が主役で、フィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー・ホフマンも主役。このクーパー演じる主人公が、PTA特有の”カリスマ”である。私はカリスマ的な人と出会ったことはまだないが、PTAの映画で、”カリスマ”とはこういう雰囲気、なんでもやっちゃう雰囲気とどうしようもなさを100%体現する人だと感じる。最近好きなジェシー・プレモンス(『もう終わりにしよう』のハマり度が最高)のもつ朴訥さと鷹揚さを持っている、曲者クーパー・ホフマン。

ハイムの人も良かった、セレブリティとは思えない感じ、セレブリティってなんだよ、とか思ってそうな感じもある。インタビューもちょっと抜けてる感じだ。「次は『ワイルド・スピード』かしら。」みたいな。

ハイムのアラナ・ハイム、リアルファミリーネームをバンド名にするのめちゃくちゃいい。両親も出演、誇らしくてたまらないだろう。アラナがトラックをバックで操縦するシーンが格別、新しい、新鮮、みたことない、示唆的、滑らかな曲芸、ハードコアだ!と主人公のカリスマバカが喜ぶが、そこでもういやだってなるのが最高。

PTAの芸能人、セレブは狂っている、ギンギンな勃起的狂気を演じるけど、それに対して、空気の抜けたようなカーアクション、いなし、流れを読み、方向性だけ与える力、いったん坂の踊り場でぐっと方向転換するときの気持ちよさ、これを『女性的な力』と仮に置こう(性別の女性とは無関係)。踊り場に乗り上げ、さらにエンジンで坂を登り詰め、ギンギンするのではなく、ひゅるりと流し、正しい位置に停まるための。

なんだか気持ちがいいのだ、時代も駄目さもすべて置いておこう、おそらく長くは続かないであろう、いろいろな恋愛の『失敗』を思い出し、よかったのだ、と一方的に思える。

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