飴を舐める

苦労を知らない奴はダメ・成長しない、弱さを知らないと強くなれない、健全な精神は健全な肉体に宿る、このような〇〇という条件を満たさないと〇〇という(善い)状態にはなれない、という説教臭さがとっても嫌いだから、実際のところはとっても大好きなのだろう。昔から言われてきた統計だから、占いって統計だから、とか一年目はまずは失敗してもいいからやってみることから、とか自分でも言ってて「これは全く借りてきたような言葉だなぁ」としっかり認識しながらそれでも構わず話していることが時々、いや頻度はわからない、頻度というものもそれをどの期間で切るのかで変わってくるからその頻度を使うカテゴリの共通の認識がある場面や対象にしかこの頻度という言葉は前提として使えないものだ。その背負いを「頻度」にだけあげるのは可愛そうである。どの言葉だってそう、そんなこととは全く無縁である、といった「普遍」という言葉にもこの前提は気づかない程度に実は産まれてこの方あり続けている肩こりのようなものと同じようにその存在は忘れられている、というか「前提」という言葉自体にはこのフックはかかってこない、唯一の逃げ場を持っているのか。言葉は全て、その他の全ての言葉を背負って、自分自身からは唯一の逃げ場だけ確保して、いつもやっているのか。そうか。みんなすごく偉いと思う。そういう意味においては言葉は人間である。

なぜ言葉は人間であるのか?ではなく、何が言葉であり人間なのか?という池田晶子的問いの立て方に倣えばみえてくることもある気がする。「何」というこの真空地点。真っ白かつ真っ黒で、伸び縮み自在な〇〇。存在したり、存在しなかったりを繰り返し、成長したり衰えたり、意味や概要を変え、しかし一定に保つ部分も持ち合わせている。仮にこれをひとつの「飴」としてみよう。何を隠そう、私は飴である。飴が飴を求めるのは畢竟、私を私で包み込む(口に含む)とそういう矛盾に落ち着きを感じたいからなのだろう。外側と内側、外側と外側で、内側と内側で、あらゆる向きと長さと強さとに引き裂かれつつある私個人としては、自分の内側で、自分という存在を舌でたしかに確かめつつ、味や香り、その感触などを愉しんでいる。最も良いのは「内側で小さくなっていくのを見届けられる」ことだ。唾液やその他気温やスピードなど、制御できること・制御できないことは様々絡み合うが、そんなことは自分の口の中くらい、置いておいていいと思う。自分なりのペースで、その終いのときまでカロカロカロカロとやっていられること。だからといって終わっても悲しさややるせなさ、取り戻しようもないという目から光が失われ、景色も音も椅子も食べ物もしっかりと感じられていながらも何も感じていない状態(それをあまりない状況として楽しんでいるかのよう、とも思える)には全然ならない。新幹線からの夕日、全く感傷的である。ナンニ・モレッティの『息子の部屋』はかなり良かった。その映画の遊園地のような状態になりたくないできるだけ。その後の棺桶はんだ付けもかなり面白かった。

かといって飴が終わった瞬間のこと、その瞬間に何が起きているのか?ということに意識は向かったことはない。なくなりかけの角張りシャリシャリし始めた飴は意識するのは容易い。しかし消えたときには今まさに飴を舐めていて、今舐め終わったのだなぁと感慨に耽ることもなし、向かい合って座った人の目に私はどのように映りどのように感ぜられ、威圧感、その足の開き方は俺を威圧しているだろう…、とかなんやらに思考の面積(ガチエリア)を奪われ座を渡し席を譲る。私は思考のガチエリア確保の各要素ではなく、飴らしくありたいものだ。どこにも代替できないような確かな感触を与えた割には、そんなことあったっけ?とすっかり忘れて他へと受け渡すような在り方。舐められてナンボ、という一言でもいいくらいである。

私の好きな飴

  • ロッテ のど飴:飴と言えばカリンののど飴。これは直方体の角の感触が本当に充実感がある。満たされる。カドケシという消しゴムの角感だけを味わえる消しゴムがあったが、それはないだろう、と思う。角はなくなるから角である良さがあるだろう。
  • 大正製薬ヴイックスのど飴󠄀プラス ハーバルミントパウダー:あんまし売ってない、ドラッグストアで見かけたら買うべし。ネットでわざわざ飴なんてもんは買うもんではないから。こいつもまた、舌触り、口腔あたりがとてもいい。ハーバルパウダーのサラサラ感は他では味わえず、さらにその下のつるつるが通常以上につるつるに感じられてよい。早く食べたい。たまに見かけたら買ってる。
  • UHA味覚糖 e-maのど飴:定番。ただし、すぐにカリッとなるのはいただけない。もう少しツルツルしていたいといつも思う。
  • UHA味覚糖 純露:UHAは強い。こちらは独特のダイヤの角錐形状でカロカロ系。ノーマルなべっこうに加え、紅茶味がまじで完璧。ちょっと文化系な香りがする。純喫茶が好きな人にあげたら絶対に喜ぶであろう。ずっと昔に紅茶味だけの純露を出して欲しいとツイートした。
  • Ricola レモンミントハーブキャンディー:カルディなど輸入食品系のお店などでどこでも買える。銀座エルメスの映画館で入場時にひとつもらえて最高だと思った。今も貰えるのだろうか。それをぱくってバンドのワンマンイベントでも入場時に配った。みんながこの飴を舐めれば過ごしやすくなるだろう。
  • ロマンス製菓 塩べっこう飴:KINOKUNIYAで最近購入。イタリア・シチリア島産の岩塩がべっこうの色の中にゴロゴロと入っている。錬金術である。ベストヒット。

こういった飴を家から出る前に口に放り込み、各バッグのポケットにはだいたい飴が入っている。特に電車に乗るときは飴を舐めるのが良い。思考を飴に変えればよい。

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